
- マルチーズのFCI上の原産地は「中央地中海沿岸地域」です。
- 「マルチーズ=マルタ島原産」とは、公式資料上は単純に言い切れません。
- マルタ島を含む中央地中海の港や臨海都市との深い関係があります。
- 祖先犬は、港や船舶などでネズミを捕らえていた小型犬だったとされています。
- 古代ギリシャ・ローマ時代から、マルチーズの祖先にあたる犬の記録が残っています。
- 現在のマルチーズは**FCIグループ9「コンパニオン・ドッグ&トイ・ドッグ」**に分類されています。
「マルチーズはどこの国の犬なの?」と疑問に思う方は多いでしょう。
名前から「マルタ島の犬」と考えがちですが、実は公式な原産地はもう少し広い地域です。
この記事では、JKCとFCIの公式資料をもとに、マルチーズの原産地とマルタ島との関係、長い歴史を分かりやすく解説します。
マルチーズはどこの国の犬?結論は「中央地中海沿岸地域」

マルチーズの原産地は、FCI(国際畜犬連盟)では「中央地中海沿岸地域」とされています。
FCI(国際畜犬連盟/Fédération Cynologique Internationale)は、ベルギーのトゥアンに本部を置く世界最大の犬種登録・血統書統括機関です。
日本で犬種を登録・紹介している一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)も、マルチーズの原産国を「中央地中海沿岸地域」としています。
- FCI(国際畜犬連盟)・・中央地中海沿岸地域としています
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)・・中央地中海沿岸地域としています
つまり、現在の国名だけで「○○国原産」と表現するより、中央地中海を起源とする犬種と理解するのが正確です。
「マルタ島原産」ではないの?

「マルチーズ」という名前からマルタ島原産と思われやすいものの、JKCの犬種標準では、マルタ島だけを原産地としていません。
JKCの解説では、マルチーズという犬種名は、単純に「マルタ島を起源とする」という意味ではないと説明されています。
「マルチーズ」に関係する言葉のルーツには、隠れ家や港を意味するセム語の「málat」があり、この言葉はアドリア海の島やシチリア、マルタ島など、複数の海運地域の名称と関係しているとされています。
したがって、
マルチーズ=マルタ島だけが原産地
と覚えるより、
マルチーズ=中央地中海沿岸地域を起源とする古い小型犬
と覚えるほうが、現在の公式犬種標準に沿った理解です。
マルタ島はマルチーズと無関係なの?
いいえ。マルタ島はマルチーズの歴史を考えるうえで重要な地域です。
マルチーズの名称には、マルタ島など中央地中海の海運地域と関連する言葉が関係しています。
また、祖先犬は中央地中海の港や臨海都市で暮らし、倉庫や船舶などにいるネズミを捕らえていたとJKCは説明しています。
そのため、「マルタ」という名前が出てくるのは偶然ではありません。
ただし、現在の公式な原産地表記は「中央地中海沿岸地域」です。
マルチーズの原産地とマルタ島の関係を整理すると分かりやすい

マルチーズの原産地について混乱しやすいのは、「原産地」と「犬種名の由来」が必ずしも同じではないためです。
| 項目 | マルチーズの場合 |
|---|---|
| FCIの原産地 | 中央地中海沿岸地域 |
| JKCの原産国 | 中央地中海沿岸地域 |
| マルタ島との関係 | 犬種名や歴史に深い関係がある |
| 後援国 | イタリア |
| FCI分類 | グループ9・コンパニオン&トイ |
| 毛色 | ピュア・ホワイトが基本 |
FCIでは、マルチーズの「Country of origin of the breed」を「CENTRAL MEDITERRANEAN BASIN」とし、「Country of patronage」をイタリアとしています。
ここで注意したいのが、「原産地」と「後援国」は別の情報だという点です。
「イタリアが原産国なの?」と思うかもしれませんが、FCIの公式情報では、原産地は中央地中海沿岸地域、後援国はイタリアです。
イタリア=原産国という意味ではありません。
マルチーズの祖先は何をしていた犬なの?
マルチーズの祖先は、中央地中海の港や臨海都市でネズミを捕らえていた小型犬だったとされています。

現在のマルチーズは、真っ白で長い被毛を持つ愛玩犬として知られています。
しかし、歴史をさかのぼると、単に人の膝の上で暮らすためだけに存在していた犬ではありません。
JKCによると、祖先犬は中央地中海の港や臨海都市にある倉庫や船舶などに生息していたネズミを狩っていたとされています。
これは、マルチーズの歴史を理解するうえで重要なポイントです。
現在のマルチーズを見ると、
- 小さくて軽い
- 長く美しい被毛
- 愛情深い
- 穏やか
- コンパニオン・ドッグとして人気
という印象が強いでしょう。
しかし、その祖先には、港や船舶周辺で人間と生活しながら役割を担っていた歴史があると考えられています。
マルチーズの歴史は古代までさかのぼる
マルチーズに関連すると考えられる小型犬は、紀元前の地中海世界からすでに人と暮らしていたとされています。
紀元前1500年頃:地中海交易とともに広まったという説
マルチーズの祖先犬の起源について、確実な記録は残っていません。
ただし、紀元前1500年頃、地中海貿易で活躍したフェニキア人の船とともに、小型犬が中央地中海沿岸の港や島々に運ばれ広まっていったという説が、複数の資料で紹介されています。
当時のマルタ島やシチリアは、商人や船乗りが行き交う交易の中継地でした。
港の倉庫や船に住み着くネズミを捕らえる役割を担っていた小型犬が、やがて人の暮らしに寄り添う存在になっていったと考えられています。
ただし、この起源については資料によって年代や経路の説明に幅があり「確定した史実」というより「有力な伝承」として捉えるのが適切です。
古代エジプト:信仰と結びついた小型犬
マルチーズの祖先とされる小型犬は、古代エジプトの遺跡からも、よく似た姿の彫像が見つかっているといわれています。
当時のエジプトでは、こうした小型犬が病を癒す力を持つと信じられていた、という言い伝えもあります。
愛玩犬としてだけでなく、人々の暮らしや信仰と結びついた存在であったことがうかがえます。
古代ギリシャ:アリストテレスの記録と陶器の絵
JKCの犬種解説では、アリストテレスの時代に存在した犬のリストの中に、ラテン語の「canes melitenses(カネス・メリテンセス)」に由来する小型犬の名称が記載されていたと紹介されています。
また、紀元前5世紀頃のギリシャの陶器には、マルチーズの祖先犬とよく似た姿の小型犬が描かれていたとされます。
当時すでに、この犬が特別な存在として人々に認識されていたことがわかります。
古代ローマ:貴婦人に愛されたコンパニオン
古代ローマの時代になると、マルチーズの祖先犬は既婚女性たちのコンパニオンとして広く知られるようになったとJKCは説明しています。
当時の貴婦人たちは、この小型犬を胸元に抱いたり、衣服の懐に入れて連れ歩いたりしていたとも伝えられています。
ローマ神話や詩の中でも、忠誠や愛情の象徴としてたびたび登場する存在でした。
中世〜ルネサンス期:ヨーロッパ宮廷への広がり
中世以降、マルチーズの祖先犬はイタリアやフランスを経由して、ヨーロッパ各国の宮廷や貴族の間へと広がっていったとされています。
JKCの解説でも触れられているとおり、ルネサンス期の画家たちは、サロンでくつろぐ女性のそばに小型犬を描くことが多くありました。
この時代の絵画には、マルチーズの祖先を思わせる白い小型犬の姿が数多く残されています。
16世紀のフランス宮廷でも、この犬種はサロンに華を添える存在として人気を集めていたと伝えられています。
19世紀:マルタ島の統治とビクトリア女王
19世紀に入るとマルタ島はイギリス領となり、この犬種はイギリス国内でも広く知られるようになったとされています。
とりわけ、愛犬家として知られたイギリスのビクトリア女王がこの犬を寵愛していたことは、当時の記録にも残っています。
王室で愛されたことで、マルチーズという犬種の知名度と人気は、ヨーロッパ全域でさらに高まっていったといえます。
日本への伝来と現代への広がり
日本にマルチーズが本格的に紹介されたのは近代以降のことです。
当時の日本では犬を屋外で飼う文化が一般的でしたが、マルチーズのような小型の室内犬の普及が、室内飼育というスタイルが広まるきっかけの一つになったともいわれています。
その後、1955年4月13日にFCIによってマルチーズが正式に犬種として認定され、現在の犬種標準が定められました。
長い年月をかけて各地で愛されてきた歴史が、公式な犬種としての確立につながったといえるでしょう。
- 紀元前1500年頃:フェニキア人の交易とともに中央地中海沿岸に広まったとされる
- 古代エジプト:信仰と結びつき、彫像などが残る
- 紀元前5〜4世紀:ギリシャの陶器に小型犬が描かれ、アリストテレスの記録にも登場
- 古代ローマ:既婚女性のコンパニオンとして人気に
- 中世〜16世紀:イタリア・フランスを経てヨーロッパ宮廷へ広がる
- 19世紀:マルタ島がイギリス領となり、ビクトリア女王も愛犬として飼育
- 近代:日本にも紹介され、室内飼育の普及に影響
- 1955年4月13日:FCIによって正式な犬種として認定
こうして時代ごとの流れを見ていくと、マルチーズが単なる「愛玩犬」としてではなく、信仰・交易・宮廷文化と結びつきながら3000年以上の歴史を歩んできた犬種であることが分かります。
なお、これらの起源にまつわるエピソードの多くは、当時の記録や後世に伝えられた資料をもとにした説であり、すべてが確定した史実というわけではありません。
年代の古さゆえに諸説が併存している点も、マルチーズという犬種の歴史の奥深さといえるでしょう。
マルチーズは現在どんな犬種に分類されている?

現在のマルチーズは、FCIではグループ9「コンパニオン・ドッグ&トイ・ドッグ」に分類されています。
FCIの犬種標準では、マルチーズは「Bichons and related breeds」の中に位置づけられています。1955年4月13日にFCIによって正式に認定されています。
JKCの犬種標準でも、用途は「コンパニオン&トイ」とされています。
つまり、現在のマルチーズは、ネズミを捕らえるための犬というより、人と暮らすコンパニオン・ドッグとして発展した犬種です。

マルチーズの現在の犬種標準
JKCが掲載しているマルチーズの犬種標準では、体高や体重についても基準が示されています。
| 項目 | JKC犬種標準 |
|---|---|
| 体高・オス | 21~25cm |
| 体高・メス | 20~23cm |
| 体重 | 3~4kg |
| 毛色 | ピュア・ホワイト |
| 用途 | コンパニオン&トイ |
なお、これは犬種標準上の基準であり、家庭で飼育しているすべてのマルチーズがこの数値に完全に一致するという意味ではありません。
「マルチーズ」という名前はマルタ島から来たの?
マルタ島との関係はありますが、「マルチーズ」という名前を単純に「マルタ島の犬」という意味だけで説明するのは正確ではありません。
JKCによると、「マルチーズ」という名称に関係する「málat」は、セム語で隠れ家や港を意味します。
さらに、その言葉はアドリア海のMéléda、シチリアのMelita、マルタ島など、複数の海運地域に関連すると説明されています。
そのため、マルチーズの名前には、中央地中海の港や海運地域との歴史的なつながりが反映されていると考えると理解しやすいでしょう。
マルチーズの原産国を調べるときに注意したい3つのポイント
①「マルタ島原産」とだけ書かれた情報を鵜呑みにしない
ネット上では「マルチーズはマルタ島原産」と簡潔に説明されることがあります。
しかし、JKCとFCIの公式情報では、原産地は中央地中海沿岸地域です。
マルタ島との歴史的な関係は重要ですが、現在の犬種標準に基づいて説明するなら、中央地中海沿岸地域とするのが適切です。
②「イタリア原産」と「後援国イタリア」を混同しない
FCIではマルチーズの後援国をイタリアとしています。
しかし、原産地は中央地中海沿岸地域です。したがって、「マルチーズはイタリア原産」とするのも正確ではありません。
③「原産地」と「現在の主要な犬種形成」を区別する
古代の小型犬と、現在の犬種標準に定められているマルチーズは、まったく同じ犬がそのまま現代まで残ったという単純な話ではありません。
長い年月の中で人間による飼育や選択が行われ、現在の犬種として確立されてきました。
そのため、歴史については「古代から現在のマルチーズが完全に同じ姿で存在していた」と考えないことも重要です。
マルチーズの「どこの国?」への答えを一言でいうと
マルチーズの原産地を正確に答えるなら、
「中央地中海沿岸地域です。マルタ島と深い歴史的関係がありますが、FCI・JKCではマルタ島だけを原産地とはしていません」
となります。
「マルタ島の犬」というイメージは完全に間違いというわけではありません。マルチーズの名称や歴史にマルタ島が深く関係しているためです。
ただし、犬種標準に基づく正式な説明では「中央地中海沿岸地域」とすることが最も正確です。
マルチーズを飼っている方やこれから迎えたい方は、真っ白な被毛や愛らしい外見だけでなく、こうした長い歴史を知っておくと、犬種への理解がさらに深まります。
参考情報
本記事では、原産地・歴史・犬種標準について、主に以下の公式資料を参照しています。
Q&A

Q1. マルチーズはどこの国が原産ですか?
FCIとJKCでは「中央地中海沿岸地域」が原産地とされています。特定の現在の国名だけで表すのは適切ではありません。
Q2. マルチーズはマルタ島原産ではないのですか?
マルタ島はマルチーズの歴史や名称と深い関係があります。ただし、公式な原産地は「中央地中海沿岸地域」とされています。
Q3. マルチーズはイタリア原産ですか?
原産地がイタリアというわけではありません。FCIではイタリアを「後援国」としていますが、原産地は中央地中海沿岸地域です。
Q4. マルチーズの祖先は何をしていた犬ですか?
JKCによると、祖先犬は中央地中海の港や臨海都市で、倉庫や船舶などにいるネズミを捕らえていたとされています。
Q5. マルチーズの歴史は古いのですか?
はい。JKCの解説では、古代ギリシャ・ローマ時代に関連する小型犬の記録が紹介されており、非常に長い歴史を持つ犬種につながるとされています。
Q6. マルチーズは現在どのような犬種ですか?
現在はFCIグループ9の「コンパニオン・ドッグ&トイ・ドッグ」に分類され、人と暮らすコンパニオン・ドッグとして知られています。
マルチーズはどこの国?の要点まとめ
- マルチーズの原産地は中央地中海沿岸地域です。
- FCIとJKCの公式情報が、この原産地表記を採用しています。
- 「マルタ島だけが原産地」とするのは正確ではありません。
- 一方で、マルタ島はマルチーズの歴史と深い関係があります。
- 「マルチーズ」という名称には、港や海運地域に関係する言葉が由来として説明されています。
- 祖先犬は中央地中海の港や臨海都市で暮らしていたとされています。
- 祖先犬は倉庫や船舶などのネズミを捕らえていたとされています。
- 古代ギリシャ・ローマ時代に関連する小型犬の記録が残されています。
- 古代には人の身近なコンパニオンとして扱われていたとされています。
- 現在のマルチーズはFCIグループ9に分類されています。
- FCIではイタリアは「後援国」であり、原産地とは別です。
- マルチーズの原産地を正確に説明するなら、「中央地中海沿岸地域を起源とし、マルタ島などと歴史的な関係を持つ犬種」と理解するのが適切です。
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